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まるこ & あおい のホントのトコロ

さらっと読めて、うんうんあるある~なエッセイ書いてます。

一生ご縁がないと思っていた「オペラ」の効用は予測をはるかに上回った

あおい

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たぶん一生ご縁がないと思っていたオペラ。

 

私にとってオペラといえば、映画ゴッドファーザーの最後のシーンで、

アル・パチーノ演じるマイケル・コルレオーネが、オペラを見に行った帰りに

暗殺されそうになったあの場面。

オペラとは、ヨーロッパの貴婦人か、もしくはマフィアのボスが見に行く

ものだと思っていた。

そんな私が、オペラを歌うことになろうとは……

 

 

ご覧になったことがある方はご存知だとは思うが、オペラとは約400年前に

イタリアで生まれた舞台芸術である。普通の演劇と何が違うのかというと、

オペラは歌いながら劇をする。じゃあミュージカルと同じじゃないかと

思われるかもしれないが実は違う。オペラはセリフをすべて歌ってしまう劇である。

初めから終わりまで、セリフはすべて歌詞になっていて、役者、つまりオペラ歌手は、

歌い続けながら演技をするのである。

しかもマイクなし! ナマ声でホール全体に響かせる声を出している。

 

マイクなしでどうしてあんな声がでるのか? というと、カラダ中の筋肉、

特にインナーマッスルを使い、骨に響かせて、カラダを楽器のように使うことで

声を出している。オペラの舞台は休憩を含めると2~3時間ぐらいあって、

主役のオペラ歌手は、休憩以外ほぼ歌いっぱなしである。

オペラ歌手は皆涼しい顔して歌っているけれど、実はものすごい重労働なのだ。

 

そんな敷居の高いオペラの曲を、私が歌うことになるきっかけは、

今から10年前、ある女性カウンセラーのすすめだった。

 

当時の私は、4人の子どもの子育てに悩み、夫との関係に悩み、

自分を見失っていた。

とにかく何をやっても自信がなかった。人の目が気になって仕方なかった。

人がどう思うのか、そればっかり気にして生きていた。

そんな私だから、自分の思いや考えをうまく人に伝えることができない、

要は自己開示ができなかったのである。

 

そんな私を見て、その女性は、「歌を歌うといいよ。オペラの曲。

しかもコーラスじゃだめ。一人で歌うの。自己開示の練習になる」

 

オ、オ、オペラですか? 

確かに音楽は大好きだ。家でも車の中でも、音楽は欠かしたことがない。

といっても私が聴くのは洋楽。特に80年代洋楽はマイケル、マドンナを

始め大好きで、流行りの洋楽は片っ端から聴いていた。が、クラッシックなんて

ジャジャジャジャーンのベートーベンの運命ぐらいしか知らんよ。

学生時代、音楽の時間はだいたい寝てたし。しかもオペラの歌なんて、

太った女性がとんでもなく高い声で叫んでいるだけで、どれも同じように

聞こえるし。

そんな私がオペラですか???

 

「まあとにかく、体験レッスンに行っておいで。先生がすてきだから」

 

そんなわけで体験レッスンを受けることになった私。

M先生は男性だった。今はとてもスリムになられたが、当時30代半ばだったM先生

は、江原啓之さんにちょっと似ていてぽっちゃり体型。いかにもオペラ歌えそう、

っていう感じでとても優しそうな先生だった。

 

「ではさっそく発声から。あで歌ってくださいね」

 

発声なんて何年ぶりだろう。そういえば高校生の時、コーラス部の幽霊部員

だったことがある。高校最後の発表会だけは頭数の一人として参加したけれど、

そのときは確かアルト。しかもほぼ口パク。だからあまり高い声はでない。

地声も低いし。そんなことを思いながらとりあえず声を出してみる。

 

 

あああああーー

 

あああああーー

 

どんどん音が上がっていく。

 

あああああーーー

 

あああああーーーーー

 

おいおい、私アルトだよ。これ以上無理! と思った瞬間、それを見透かしたように

先生が、「大丈夫! まだ出ますから!」

 

ええっ、これ以上高い声、今まで出したことないよ。

でも、先生が出るって言うなら……

 

あああああーーー

 

え、うそ、出た! 

それは今まで聞いたことがない自分の声だった。

へえ、こんな声出るんだ、私。

 

「これ以上出ない、と思った瞬間出なくなるんです。まずは出していい、

と思うことです」

そうか、出していいんだ。これが私の「歌で自己開示」の始まりだった。

 

そこから月に1回~2回のレッスンがスタートした。

M先生のレッスンは、とにかくユニークなレッスンだった。例えば

発声練習をしながら、突然こんな事をおっしゃる。

「今、アゴが岩崎宏美。しかもモノマネのコロッケがやってる岩崎宏美!」

こっちはいたって真面目にやっているのに、「手の動きが中森明菜!」とか、

「今の声は美川憲一!」とか「突然おっさん出てきました!」とか言いながら、

即座に私の真似をされるから、思わず吹き出してしまう。

 

それだけでなく、おまたの間に電話帳挟んだり、四つん這いになったり、

何も知らない第三者が部屋に入ってきたら何のレッスン? と思うかもしれないが、

これも声を出すための準備運動。

 

声楽って、冗談なんて言わずにひたすら真面目に声を出すと思っていた私は、

毎回驚きの連続だった。

こうやってカラダを使い、例えを使い、素人にもわかりやすく教えてくれる。

小学生の時のピアノから始まって、今までいろいろ習い事をしてきたけれど、

こんなに習い事が楽しいと思ったことはなかった。

 

 

習い始めて1年後、初めての発表会に出ることになった。

その当時の私は、発表会に出たいくせに、出たいと自分でなかなか言えなかった。

一緒に習っている友達が「出ます」って言ったのに便乗して、「私も出たいです」と

やっと言えたのだった。

 

そこから発表会に向けての練習が始まった。

まずは曲を決める。これは先生が声にあった曲を決めてくださる。

それからメロディを覚え、歌詞を暗譜し、最後は挨拶の仕方や手の動きなどを

練習して、いよいよ本番を迎える。

 

当日は、普段は絶対しないつけまつげをつけて、宝塚ばりのメイクをして、

髪の毛も美容院でアップにしてもらい、普段着ないロングのドレスを着て、

普段履かないようなハイヒールをはき、何もかもが非日常な装い。

ウキウキとドキドキが混ざったような気持ちで、舞台袖で出番を待つ。

といっても私の歌う歌は、たった2分ほどの短い曲なんだけれど。

 

いよいよ、出番。舞台に出る。

挨拶をして、ピアノ伴奏してくださるM先生に向かって、目でスタートの合図。

 

伴奏が始まる。スポットライトが眩しい。足が震える。

先生に教えてもらったことも、歌詞もメロディも全部ぶっ飛んで頭が真っ白に

なりそうだ。

おっ、声が上ずっている。あかんあかん。

そうこうしているうちにあっという間にクライマックス。

高い声ちゃんと出るかな? 不安がよぎる。

 

ああーー!

なんとか出た! 

終わった。

挨拶をして舞台を去る。

 

やった! 思わず笑みがこぼれた。

 

自己開示が苦手な私が、舞台で、しかもたった一人で、最後まで歌えた!

言葉にできない自分の思いを、少しだけど歌で表現することができたのだ。

 

考えてみれば、ドレスをきておしゃれをして、スポットライトを浴びて、

みんなが私だけを見てくれるなんて、こんなこと、結婚式の披露宴ぶり?!

一生のうちでそうあることじゃない。

 

北島康介くんじゃないけれど

 

超気持ちいいーーー

 

ここから私は、病みつきになってしまったのであった。年に一度の発表会が。

 

 

発表会は毎年、新しい自分との出会いだった。

一年目は無我夢中、何もわからないうちに終わってしまったけれど、2年目は

1回目の経験で、あそこでこうなる、ここでこうなる、っていうのがわかるから、

一回目よりも緊張してしまった。

 

3年目になると今度は、上手く歌いたいという余計な思いが出てくる。

はじめての人には負けたくない、上手くなったと思われたい、ここでもまた

人の目を気にする自分。

そういうエゴがでてくると、だいたいうまくいかない。3年目は散々だった。

 

こうやって毎年、自分の気持ちと向き合いながらレッスンを重ねていたけれど、

ある時私はなんのために声楽を習っているんだろう? と改めて思ったことがあった。

それは、練習しても思うようにうまくならない自分に対するジレンマからであった。

 

そんな私の様子を、先生はちゃんとキャッチしてくださっていた。

「まずは自分が楽しむこと。お金をもらって舞台に立つわけじゃないんだから、

自分が楽しんで歌えば、聞いている人も楽しんでくれます」

そうだ、私はプロではない、お金をもらって聞きに来てもらうプロではないんだ、

私はお金を払ってレッスンしているんだ、だったら自分が楽しんで歌えば

いいじゃないか。そう思えた時、気持ちが楽になって、開き直れたような気がした。

 

その年の発表会は自分でも驚くほど気持ちよく歌えた。仲間からも良かったよ、

感動したと声をかけてもらった。歌には自分の思いがそのまま伝わるんだな。

上手く歌おうと思えば思うほど歌えない。自分が楽しもうと決めたとたん、

自分も満足できて、人かも良かったと言ってくれる。先生がおっしゃったことを、

身を持って体験することができた。

 

そしてそのとき私は、自分が自己開示できなかった理由に気づいてしまった。

それは間違ってはいけないと思っていだからだった。

上手くやらなきゃいけない、間違って恥ずかしい思いをしたくない、

そんな思いで頭がいっぱいだったから、自分のことを自分の言葉で話すことが

できなかったんだ。

 

間違ってもいい、下手でもいい、とにかく自分が楽しんで一生懸命であれば、

その姿を見て人は感動してくれるんだ。

 

そもそも、正しいとか間違いとか、そんなものはないのかもしれない。

自分の思いをただひたむきに伝える、それが自己開示なんだ。

 

カウンセラーの女性が言ったとおりだった。

まさか歌うことで、こんな大事なことに気づくとは思っていなかった。

習い始めて5年目の出来事だった。

 

 

そこから5年、気づけば今年は10年目の発表会を迎え、すっかり古株になって

しまった私。おかげさまで今では人目を気にすることもあまりなくなった。

自己開示が趣味か? というぐらい自己開示しまくっている。

歌うことが自己開示のきっかけをえてくれたと思っている。

 

最近はそれだけではなく、オペラを歌うことの他の効用にも気づいてしまった。

オペラの発声はインナーマッスルを使うから、体幹がしっかりして、姿勢が良くなる。

 

目を見開いたり、口角や頬骨を上げたり、顔の表情筋をめちゃくちゃ使うから、

シワたるみの予防になる。

なんと、歌うことがアンチエイジングになるのだ! 

 

最近お腹周りの肉が気になるとか、顔のたるみが気になるという方が

いらっしゃったら、ぜひ一度体験していただきたい。

ジムやエステに行くよりも手っ取り早くて安上がりな方法だと

 私は思っているのだけれど。

 

記事:あおい