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まるこ & あおい のホントのトコロ

さらっと読めて、うんうんあるある~なエッセイ書いてます。

人生に彩りが少ないのなら、クローゼットの中を見て欲しい

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電車の中で私の目の前に座るステキな女子。ものすごく美人というわけでもないのに、なぜかキラキラして見える。私は吊革につかまる手に力を入れ、彼女を観察してみた。

うん、やっぱり顔って訳じゃない。彼女は確かにかわいい、けれどそこじゃない。髪型? お化粧? ヘアースタイル? 洋服? あっ! わかった。色だ、色。着ている洋服の色が明るくて、彼女にとても似合っているからだ。そうか! こういうことなんだな。

私は最近コスプレを始めた。
と言っても、アニメの……とかそういうものではなく、見た目は普通だから誰にもわからないだろう。

パーソナルカラー診断というものをご存じだろうか? 人それぞれに似合う色は違うので、何色が似合うのか、沢山の色を胸元に次々に置いて診断してゆくのだ。髪の色や瞳の色、肌の色も人によって違うので、似合う色も変わってくるのだ。その結果、私はピンクや赤、薄い紫、紺色などが似合うということだった。
紺色や薄い紫はまだしも、ピンク? そんな選択肢は私の中になかった。ええっ? ピンクですか? 無理っ! 私のピンクのイメージは「ザ・女子」なのだ。私も一応戸籍上「女」ではあるが、中身は限りなく「男」だし。
昔から女子の群れが苦手だった。みんなでトイレに一緒に行く意味もわからなかったし、みんなで何か……というあの感じ。どうにもなじめなかった。そんな私がピンク?! いまや死語かもしれないが、ピンクと言えば「ぶりっ子」だ。そう、ぶりっ子のイメージ。いつからピンクにこんなイメージを持ったのかわからないが、とにかく私は全力でピンクを遠ざけていたのだ。けれども、そのピンクが似合うという。にわかには信じられないが、そう言うならば、一度やってみようではないか! ピンクよ、かかってこんかい!

そう言うわけで、私は似合うと言われたピンクの服を増やした。増やしたからには着なくてはいけない。袖を通してみると、ムズムズしてくる。体が若干の拒否反応を示しているようだ。借り物の衣装を着ている気分。落ち着かないし、まるで他人になったみたいだ。そう、だからコスプレ。自分ではない誰か、そして、その衣装。ピンクは誰にも気づかれることのないコスプレ衣装だった。

「その洋服似合うね」
「え? あ、ありがとう」

「その色似合うよねぇ」
「本当に?」

陰謀だ、陰謀。私にピンクが似合うはずなんてないのに。誰? 誰が私を陥れようとしているの?
私は受け入れることができずに、そんな風に抵抗していた。しかし、本当に会う人がみんな、服が、その色が、似合うと言ってくれるのだ。途中までは必死に抗っていたが、徐々に洗脳されてゆく私。どうやら、本当に私にはピンクが似合うらしい。と言うことは、私は「ぶりっ子」なのか? いや、違う! そもそも、その前提が間違っているのだ。そろそろ、私の中のピンクのイメージを書き換える時が来たようだ。

改めて自分のクローゼットを見てみた。白、紺、黒。ほぼモノトーンの世界だ。ほとんど色のない世界。
ああ、私は長らくこんな世界に住んでいたのだ。そりゃあ、人生に彩りも少なかろう。妙に納得してしまう。守りの人生。自分のテリトリーから出るのが怖かったのだ。必死で自分の狭い世界を守ってきたのだ。何から? 誰が、何が、攻めてくると言うのだろう。私は何をそんなに守りたかったのだろうか?
思えば、物心ついたときからピンクを着た記憶なんてない。制服はモノトーンの世界の服だし、私服にもピンクなんてなかった。もしかしたらあったのかもしれないが、記憶にない。けれど、気づけばモノトーンの世界の住人だった。

それは、きっと自分を隠しておきたかったのだ。自分を出して、少しでも否定されようものなら、もう立ち直れない。傷つきたくないから、事前に予防線を張っておく。目立たずに、ひっそりと。それが、私のモノトーンの服の正体だったのではないかと思う。

そこにやってきた、ピンク! 初めこそ慣れなかったが、慣れてくると何だか気持ちも明るくなるような、体温まであがるような、そんな気になる。
私はここにいる! と少し言えるような、そんな気持ち。ああ、もう自分を隠しておく必要なんてないのだ。誰も、何も、攻めてなど来ない。
ピンクを着るようになって、私は少し自分に自信がついたようだ。

目の前の素敵な女子がキラキラしているのは、明るい色の洋服のせいだった。いや、彼女が醸し出す雰囲気のせいかもしれない。どちらが先なのかわからないが、ともかく、彼女はモノトーン時代の私のように自分を隠そうとはしていない。だから美しいのだ。

人生に彩りが少ないと思うなら、クローゼットを見て欲しい。
もし、クローゼットがモノトーンの世界だったら、自分に似合う明るい色を足してみることをおすすめしたい。

 

記事:渋沢 まるこ