まるこ & あおい のホントのトコロ

さらっと読めて、うんうんあるある~なエッセイ書いてます。

オンナが褒めて欲しい時。

 

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「変わった服やね」

 

あれは忘れもしない、結婚してまだ間がない頃だった。

ワンピースだったかなんだったか、はっきりは覚えていないけれど、

気に入って買った服を着て、出かけようとしているときのことだった。

夫が私の服を見て言ったのだ。「変わった服やね」と。

 

私は耳を疑った。

変わった服??

はあ?

芸人でもあるまいし、決してウケ狙いで買ったわけではない。

純粋に気に入って買った服を見て、だ。

 

「それって褒めてんの? けなしてんの?」

私は夫に詰め寄った。

 

夫は苦しまぎれに「褒めてるに決まってるやん」と言った。

いや、決して褒めてるとは思えなかった。

褒めてるなら素直に「いいね」「似合ってるね」と言えばいいじゃないか。

 だいたい普段から褒めてくれることなどないのに、今日に限って「変わった服」

とは何事だ。

 

当時は20代、まだまだ若くてかわいい時(自分で言うな)に

変わった服と言われて、「きゃあ、嬉しい♡」と喜ぶ女がいるとでも思ったの

だろうか?

 

 

結婚25年たった今、夫の性格から考えて、あの時きっとココロの中はこうだった

んだろうと推測している。

「その服は、決してボクの好みではない。けれど、人に自分の好みを押し付けるほど

ボクは強引な人間ではないから、あなたがそれでいいのならまあいいとしよう」

それが「変わった服」という表現になったのではないかと。

 

でもそのときは結婚したばかりで、そんなことはわからない。

私は結構ショックだった。もしかしたらそれ以来、

その服は着なかったかもしれない。

 

 

この変わった○○という表現を、夫は時々料理にも引用した。

 

彼は食に全く興味がない。

彼の食に対する考え方は、「満腹になればいい」だ。

だから、今日の夕食にどんな料理が出ていたか、

食材はなんだったか、そんなことには一切興味がないし覚えてもいない。

 

だいたいつい最近まで、

レタスかキャベツか白菜かの区別もついてなかったし(今も怪しいけど)

青菜に至っては多分今も理解できていないと思うし、

きくらげは海に泳いでいるくらげの親戚だとずっと思っていた。

 

料理が冷めていようが、どんな器に入っていようが、

そんなことはどうでもいい。

とにかく満腹になればいい。そしてあとは

彼の味覚による旨いか旨くないか、それだけ。

 

 

そんな夫だから、手の込んだ料理を作っても

それが手が込んでいるのかどうかもわからない。

 

ある関西の女性芸人が

今日の晩御飯何がいい? ってご主人に尋ねたら、

「今日は忙しかっただろうから簡単なものでいいよ。

トンカツとか」

って言うのを聞いて、彼女は「殴ったろかと思った」て言ってたけど、

うちの夫なら言いかねないと思った。

 

 

食のことは全くわからない、興味もない、そんな夫が、

なぜか私がたまに新しいものを作ったりすると、こういうのだ。

 

「これ、変わった味やね」

 

そこで私はまたはあ? となる。

普段美味しともまずいとも、何も言わないくせに

初めて食べるものに関しては、時折「変わった味」と表現するのだ。

 

そこで私はまた問い詰める。

「それって褒めてるん? けなしてるん?」

 

すると夫はまた苦し紛れにこういうのだ。

「褒めてるに決まってるやん」

 

褒めてるなら素直に「おいしい」と言え! 私はココロの中でいつも叫んでいた。

そもそも、変わった味というものが存在するのだろうか?

味といえば、甘味、辛味、酸味、苦味、塩味、旨味、

それ以外の味があったら教えて欲しいわ。

 

料理のこと何もわからんくせに、

そこだけなんで「変わった味」とか表現するわけ?

 

 

その時の夫のココロの声はきっとこうだったに違いない。

「この味はボクの好みではないけれど、食のことはよくわからんし、

せっかく作ってくれたからとりあえず今日は食べる。でも次はもういらんかな」

 

 

そういえば、髪型を変えた時にも

「変わった髪型やね」って言われた記憶がある。

 

 

 

 

そうだ、夫は自分の好みに合わないものを

変わった○○と表現しているのだ。

 

 

自分の好みではないけれど、だからといって

自分の好みを押し付けることがいいとは思わない。

 

だって、人それぞれ好みはあるし、

あなたが好んでその服を買ったのだろうし、

あなたは美味しいと思って作ったのでしょう。

  

だから、その服、ボクの好みじゃないから着るのやめて、とか

その料理、ボクの好みじゃないから作るのやめて、とは言いません。

 

でも、ボクは好きじゃないということも

少しわかってもらいたいと思う。

 

 

 

これはあくまで私の推測に過ぎない。

でもこれら思いが「変わった○○」というひとことに

集約されているとしたら

 

「変わった○○」という言葉は、

私をなるべく傷つけずに、自分の思いをさりげなく伝えるための

夫の最大の配慮なのかもしれない。もちろん無意識だけれど。

  

「変わった○○」は夫の優しさだったのだということにしておこう。

 

 

 

が、私は言いたい。世の中の男性たちに。

洋服、料理、髪型

オンナの3大褒めポイントを決して外してはいけない。

「変わった服」では決してオンナは喜ばない。

 「変わった味」と言われても嬉しくもなんともない。

「変わった髪型」なんてもってのほか。

 

 

たとえその服が、その料理が、その髪型が

自分の好みでなかったとしても

とりあえずは「いいね」と言って欲しい。

 

 

反対に言えば

そこさえ押さえておけば間違いないのだ。

 

一旦「いいね」と受け取ったら次はこう言って欲しい。

「その服もいいけど、ボクは、あの服の方が似合ってると思う」

「この料理もいいけど、ボクはあっちの料理の方が美味しいな」

「その髪型もいいけど、ボクはこっちの方が好きかな」

それが結果的に、あなた好みの女性を作ることになる。

 

 

 

あ、念のため言っておくと、我が家の場合は今更こんなこと言われても

もう手遅れである。「あ、そうなん?」で終わる。

 

なぜなら、私は夫に何を言われようと、

自分の着たい服を着て、自分の食べたいものを作って、

自分の好きな髪型にする幸せなオンナになってしまったから。

 

それは夫が、素直に褒めるのではなく

「変わった○○」という言葉を使い続けてくれたおかげだとしたら、

褒めてくれなかったことを感謝しなければならない。

 

 

褒めて褒めて褒めまくって自分好みのオンナにするか、

自分好みではないかもしれないけれど、

ご機嫌よく生きるオンナにするか、

それは男の腕次第。

 

 

これは実は反対もしかりで、

あるアメリカの作家が、男を成功させる3つの言葉として、

「素晴らしい! いい考え! あなたの言うとおりだわ!」

この3つを会話の途中にはさむだけでいい、と言っていたけれど、

実はほとんど言ったことがない。

 

それでもなんやかんやありながら、結婚して25年たったということは

結局は褒めても褒めなくても

どっちでも、どうにでもなる、ということなのだろうか。 

<終わり>

 

記事:あおい